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火災保険は経年劣化での外壁塗装に適用されるのか?
2025年06月24日(火)
「そろそろ外壁塗装を考えないといけないな…でも、費用がかなりかかりそうだ」
「外壁のひび割れや塗装の剥がれ、これって火災保険で直せないのかな?」
「経年劣化による外壁塗装に火災保険が使えるって聞いたけど、本当だろうか?」
マイホームのメンテナンスにおいて、外壁塗装は美観を保ち、建物を保護するために欠かせない重要な工事です。しかし、その費用は決して安くはなく、100万円以上かかることも珍しくありません。だからこそ、「もし火災保険が使えるなら、ぜひ活用したい」と考えるのは当然のことでしょう。
インターネット上には「火災保険で外壁塗装が実質無料に!」といった魅力的な言葉も溢れていますが、その一方で「経年劣化では適用されない」という情報もあり、一体どちらが正しいのか混乱している方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな外壁塗装と火災保険の関係について、塗装のプロフェッショナルの視点から、その真実を徹底的に解説していきます。
火災保険は経年劣化による外壁塗装に適用される?
原則として、経年劣化が原因の外壁塗装に火災保険は適用されません。
火災保険は、その名の通り「火災」をはじめ、台風や落雷、雪災といった「予測不能な突発的事故(自然災害など)」によって生じた損害を補償するための保険です。
一方で、経年劣化(経年変化)とは、時間の経過とともに塗膜の色褪せやチョーキング(粉吹き)、ひび割れなどが自然に発生する現象です。これは予測不能な事故ではなく、建物が年月の経過とともに必然的に劣化していく過程の一部です。
したがって、太陽光や雨風に長年さらされた結果として生じた「経年劣化」による外壁の塗り替えは、保険の補償対象外となるのです。
しかし、経年劣化の症状が見られる外壁でも、自然災害による直接的な損害が確認されれば、その部分の補修費用は火災保険の対象となる可能性があります。
例えば、経年劣化で少し弱くなっていた外壁に、台風で飛んできた物が当たってへこみや傷ができた場合、その損傷は「台風による突発的な事故」と見なされ、補償の対象となり得ます。つまり、「経年劣化か、災害による損害か」を正しく見極めることが、火災保険を適用できるかどうかの鍵となるのです。
火災保険の対象となる外壁塗装の条件
経年劣化が見られる外壁であっても、自然災害による損害で火災保険を申請するためには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。これらの条件を一つひとつ確認していきましょう。
偶発的な事故による損害の場合
火災保険の基本原則は、「予測不能」かつ「突発的」な事故による損害を補償することです。外壁塗装においては、台風、竜巻、雪、ひょう、落雷といった自然災害や、飛来物・衝突による損害がこれに該当します。ゆっくりと進行する経年劣化や、予測可能な損耗は対象外です。
加入済みの火災保険の補償範囲内である場合
ご自身が加入している火災保険の契約内容が、原因となった災害を補償する範囲内であることが必須です。多くの火災保険では、「風災・雹(ひょう)災・雪災」は基本補償に含まれていますが、契約内容によっては対象外となっている場合や、オプションとなっているケースもあります。
まずは、ご自宅の保険証券を取り出し、「補償内容」の項目をしっかりと確認することが重要です。
損害が発生してから3年以内である場合
保険法第95条により、保険金の請求権は損害が発生してから3年で時効となることが定められています。つまり、3年以上前に発生した台風や雪による被害については、原則として保険金を請求する権利がなくなってしまいます。
「いつの災害による被害か分からない」という場合でも、諦める必要はありません。塗装の専門家が被害状況を調査することで、原因となった災害を特定できる場合もあります。心当たりのある災害があれば、まずは相談してみることが大切です。
補修費用が加入済みの火災保険の免責金額を上回る場合
火災保険の契約には、多くの場合「免責金額」が設定されています。免責金額とは、損害が発生した際に、契約者が自己負担する金額のことです。
例えば、免責金額が20万円に設定されている契約で、外壁の修理費用が50万円と見積もられた場合、保険会社からは差額の30万円が支払われます。しかし、修理費用が15万円だった場合、免責金額の20万円を下回るため、保険金は1円も支払われません。
この免責金額の設定方式には、一定額を自己負担する「免責方式(エクセス方式)」と、損害額が一定額(多くは20万円)を超えないと保険金が支払われない「フランチャイズ方式」があります。ご自身の契約がどちらの方式で、免責金額がいくらに設定されているか、これも保険証券で必ず確認しましょう。
経年劣化による外壁塗装でも火災保険が適用される自然災害
では、具体的にどのような自然災害による被害であれば、経年劣化の進んだ外壁でも火災保険の対象となる可能性があるのでしょうか。代表的なケースをご紹介します。
台風・竜巻による被害
「風災」として補償の対象となります。非常に強力な風によって、以下のような被害が発生した場合に適用される可能性があります。
- 飛来物による損傷:強風で飛ばされてきた看板や瓦、木の枝などが外壁に当たり、へこみや傷、ひび割れが生じた。
- 外壁材の剥がれ・飛散:強風によって、サイディングボードやALCパネルなどの外壁材そのものが剥がれたり、浮き上がったり、飛んでいってしまったりした。
- 防水機能の損傷:棟板金や雨樋などが強風で破損し、その結果として外壁内部への雨水の侵入経路ができてしまった。
雪・ひょうによる被害
「雪災」「雹災」として補償の対象となります。
【雪による被害】
- 屋根に積もった雪の重みで雨樋が変形・破損し、外壁に影響が出た。
- 隣家の屋根から滑り落ちてきた雪の塊が、自宅の外壁に直撃し損傷した。
- 雪解け水が外壁の劣化した部分から侵入し、内部を腐食させた。
【ひょうによる被害】
- ゴルフボール大の雹が降り、外壁(特に金属サイディングなど)に多数のへこみや傷ができた。
- 雹によって窓ガラスが割れ、その衝撃で周辺の外壁にひびが入った。
落雷による被害
「落雷」による被害も補償対象です。直接的な落雷だけでなく、近隣への落雷による影響も含まれる場合があります。
- 直接の損傷: 自宅や非常に近い場所に雷が落ち、その衝撃で外壁に亀裂が入ったり、一部が焼け焦げたりした。
- 過電流による被害: 落雷による過電流(サージ電流)で、外壁に設置されている給湯器やインターホンなどの電気設備が故障した。(※建物の補償に含まれる場合)
外部からの衝撃を受けた被害
「物体の落下・飛来・衝突」という補償項目でカバーされます。これは自然災害に限りません。
- 自動車の衝突: 自動車が誤って自宅の外壁に衝突し、壁が破損した。
- ボールなどによる損傷: 隣の公園から飛んできた硬球が当たり、外壁にへこみができた。
- 上階からの落下物: マンションなどで、上階から誤って落とされた植木鉢などが外壁に当たり損傷した。
外壁塗装の費用を火災保険で賄うデメリット
火災保険を活用できれば費用負担を大きく軽減できますが、申請にあたってはいくつかのデメリットや注意点も存在します。
これらを理解しておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
デメリット①個人での申請が難しい
火災保険の申請には、専門的な知識が必要です。特に、「この損傷が経年劣化ではなく、特定の自然災害によるものである」ということを、客観的な証拠(写真や報告書)をもって保険会社に証明しなければなりません。
一般の方がご自身で被害状況を正確に把握し、適切な書類を作成するのは非常に困難です。どこまでが補償範囲になるのかの判断も難しく、本来受け取れるはずの保険金が減額されたり、最悪の場合、申請が認められなかったりするケースも少なくありません。
デメリット②支払われるまでの期間が長い
火災保険を申請してから、実際に保険金が支払われるまでには、ある程度の時間がかかります。書類の提出後、保険会社による審査や鑑定人による実地調査が行われ、スムーズに進んだとしても1ヶ月~2ヶ月程度かかるのが一般的です。
被害が大きく、すぐにでも修理が必要な場合でも、保険金が支払われる前に工事を始めてしまうと、損害の状況が確認できなくなり、正当な保険金が受け取れなくなるリスクがあります。このタイムラグを考慮し、計画的に進める必要があります。
デメリット③悪質な業者とのトラブルに注意が必要
火災保険の申請サポートを行う業者の中には、残念ながら悪質な業者が存在することも事実です。「自己負担ゼロで外壁塗装ができる」などと甘い言葉で勧誘し、契約を急がせる業者には特に注意が必要です。
【悪質な業者の手口例】
- 虚偽申請の強要: 経年劣化による損傷を「台風のせい」だと偽って申請するように持ちかける。
- 高額な手数料の請求: 保険金が下りた際に、成功報酬として30%~50%といった高額な手数料を請求する。
- ずさんな工事: 保険金が下りた後、その範囲内で非常に質の低い、手抜き工事を行う。
虚偽の申請に加担してしまうと、保険契約者自身が保険金詐欺に問われる可能性があり、非常に危険です。一般社団法人 日本損害保険協会も、こうしたトラブルに対する注意喚起を強く行っています。
火災保険の申請を検討する際は、必ず信頼できる地元の塗装業者や、保険代理店に相談することが重要です。
経年劣化による外壁塗装に伴い火災保険の給付金を申請する流れ
火災保険の申請は、正しい手順に沿って進めることが重要です。ここでは、一般的な申請の流れを6つのステップで解説します。
保険会社に連絡する
まず最初に、ご自身が加入している保険会社または保険代理店の事故受付窓口に連絡をします。「いつ、何が原因で、どこが、どのようになったか」を伝え、保険金の請求をしたい旨を申し出ます。この時点で、担当者から今後の流れや必要書類についてのアナウンスがあります。
修理会社に見積もりを依頼する
次に、信頼できる外壁塗装業者に連絡し、被害状況の調査と修理費用の見積もりを依頼します。この際、単なる見積書だけでなく、「被害箇所の写真」や「どの災害によって、どのような損害が生じたか」をまとめた「被害状況報告書」を作成してもらうことが非常に重要です。この報告書が、損害を客観的に証明する強力な証拠となります。
申請書類を作成する
保険会社から送られてくる「保険金請求書」に必要事項を記入します。氏名や住所、保険証券番号、事故の状況などを、事実に基づいて正確に記入してください。不明な点があれば、保険会社の担当者に確認しながら進めましょう。
保険会社に書類を送付する
記入した「保険金請求書」に、塗装業者から受け取った「被害状況報告書」「見積書」などを添付して、保険会社に送付します。送付前に、すべての書類のコピーを保管しておくことをお勧めします。
実地調査を受ける
書類を受理した保険会社は、その内容を審査します。損害の状況や金額によっては、保険会社が依頼した第三者機関である「損害保険鑑定人」が、実際に現地へ調査に訪れることがあります。
鑑定人は、提出された書類と実際の被害状況を照らし合わせ、損害の原因や妥当な修理費用を判断します。この際には、調査に立ち会い、被害状況を直接説明できるとよりスムーズです。
保険金の入金を待つ
審査と調査が完了し、支払われる保険金の額が確定すると、保険会社から通知が届きます。金額に合意すれば、後日、指定した口座に保険金が振り込まれます。この保険金の入金を確認してから、正式に塗装業者と工事契約を結び、修理を開始するのが最も安全な進め方です。
経年劣化による外壁塗装に伴い火災保険の給付金を申請する際の必要書類
申請の際に必要となる主な書類を一覧表にまとめました。事前に準備しておくことで、手続きを円滑に進めることができます。
書類名 | 入手先 | 内容 |
保険金請求書 | 保険会社 | 契約者情報、事故状況、振込口座などを記入する申請の基本書類。 |
事故状況説明書 | 保険会社 | いつ、どこで、何が原因で、どのような損害が出たかを詳細に説明する書類。 |
修理費見積書 | 塗装業者 | 被害箇所の修理にいくらかかるかを示す詳細な見積もり。 |
被害状況報告書 | 塗装業者 | 被害箇所の写真や、災害との因果関係を証明するための報告書。 |
建物登記簿謄本 | 法務局 | 建物の所有者を証明するための書類。(必要な場合がある) |
外壁塗装に火災保険が適用できるかまずは調べてみよう
今回は、経年劣化による外壁塗装に火災保険が適用されるのか、というテーマについて詳しく解説しました。
外壁塗装は大切な住まいを守るための重要な投資です。その費用負担を、火災保険を活用して軽減できる可能性があるのなら、それはぜひ検討すべき選択肢といえるでしょう。
しかし、そのためには正しい知識を持ち、適切な手順を踏むことが何よりも重要です。そして、そのプロセスにおいて最も信頼できるパートナーとなるのが、地域のことをよく知り、お客様の立場に立って誠実な対応をしてくれる塗装業者です。
ご自宅の外壁の劣化が、単なる経年劣化なのか、それとも災害による被害が隠れているのか、ご自身で判断するのは難しいものです。
もし少しでも気になる点があれば、まずは私たちアイシーホームペイントのような塗装のプロにご相談ください。
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