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DIYで外壁塗装を済ませたい場合はスプレーが有効?
2025年06月30日(月)
外壁塗装の費用を抑えるためにDIYを検討する中で、より手軽で、かつプロのような均一な仕上がりを期待して「スプレー塗装」に関心を持つ方は少なくありません。シューっと吹き付けるだけで、広範囲を素早く塗れるようなイメージがあるかもしれませんね。
しかし、そのイメージだけで安易にDIYのスプレー塗装に手を出してしまうと、「こんなはずじゃなかった…」と後悔するどころか、ご近所との深刻なトラブルや、取り返しのつかない失敗を招く可能性が非常に高いのです。
この記事では、外壁塗装のプロフェッショナルとして、DIYにおけるスプレー塗装の真実を、その手順やメリット・デメリットを交えながら徹底的に解説します。
スプレーを使ったDIYで外壁塗装はできる?
結論から申し上げると、「小さな範囲の補修程度なら可能ですが、家一軒まるごとといった本格的な外壁塗装を、DIYでスプレーを使って行うことは絶対に推奨できません」というのが、プロの答えです。
多くの方がイメージする「プロが使うスプレー」と、ホームセンターなどで手に入る「DIY用の缶スプレー」は、似て非なる、全くの別物です。
- プロが使うスプレーガン: コンプレッサーで高い圧力をかけ、塗料を霧状にして均一に吹き付ける専門機材です。塗料の吐出量や噴射パターンを細かく調整でき、広範囲をムラなく、かつ効率的に塗装するために設計されています。
- DIY用の缶スプレー: 缶内部のガス圧で塗料を噴射する簡易的なものです。噴射圧が弱く、連続噴射時間も短いため、均一な塗膜を形成するのが非常に困難です。小物や家具の塗装、あるいはごく小さな傷のタッチアップ補修などを目的としており、建物の外壁のような広大で過酷な環境に耐えうる塗装を行うためのものではありません。
DIYで外壁全体をスプレー塗装しようとすることは、例えるなら、家庭用のインクジェットプリンターで巨大な屋外広告看板を印刷しようとするようなものです。物理的には不可能ではありませんが、膨大な手間とコストがかかる上に、プロの品質には到底及ばず、様々なリスクを伴うのです。
スプレーを使ったDIYで外壁塗装をする場合の手順
推奨はできませんが、もしごく小さな範囲をDIYでスプレー塗装する場合、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。プロが行う基本的な工程に沿って、その内容と大変さを見ていきましょう。
塗装の場所を選ぶ
まず、どこを塗装するのかを決めます。前述の通り、外壁全体をスプレーでDIYするのは現実的ではありません。物置の壁や、塀の一部、傷がついてしまった部分のタッチアップ補修など、範囲を限定することが大前提です。また、高所での作業は極めて危険なため、地面に足が着く、手の届く範囲に留めるべきです。
マスカーで養生する
スプレー塗装において、この「養生(ようじょう)」が作業の成否を分ける最も重要な工程といっても過言ではありません。スプレーの塗料は、思っている以上に広範囲に飛び散ります。
塗装しない窓やサッシ、玄関ドア、給湯器、植木などはもちろん、地面や車、自転車なども、ビニールシートや「マスカー」と呼ばれる養生材で、隙間なく完璧に覆う必要があります。この養生を少しでも怠ると、塗料が付着してしまい、後から落とすのに大変な労力がかかったり、最悪の場合、元に戻せなくなったりします。プロはこの養生作業に、多くの時間と手間をかけています。
掃除をして表面を磨く
塗装面の汚れや古い塗膜、カビ、コケなどを、ブラシや高圧洗浄機を使って徹底的に除去します。この作業を「ケレン」や「素地調整」と呼び、塗料の密着性を高めるために不可欠な工程です。
汚れが残ったまま塗装しても、塗料がすぐに剥がれてしまいます。また、高圧洗浄機を使う場合は、水圧が強すぎると外壁材を傷めてしまう可能性もあるため、注意が必要です。洗浄後は、壁が完全に乾燥するまで、夏場で1日、冬場では2~3日待つ必要があります。
下地スプレーで塗装する
いきなり仕上げの色を塗るのではなく、必ず「下塗り」を行います。下塗りには、仕上げ用塗料と外壁材との密着性を高める「プライマー」や、下地の細かな傷を埋めて吸い込みを均一にする「シーラー」といった役割があります。
この下塗り工程を省略すると、仕上げ塗料がうまく密着せず、数年、早ければ数ヶ月で塗装が剥がれてくる原因となります。スプレータイプの下塗り材を使用し、ムラなく均一に吹き付けます。
ペイントスプレーで塗装する
下塗りが完全に乾燥したら、いよいよ仕上げのペイントスプレーで塗装します。プロの現場では、耐久性のある塗膜を形成するために「中塗り」と「上塗り」の2回塗り(合計3回塗り)が基本ですが、DIYではこの工程を再現するのは困難です。
スプレー塗装のコツは、「薄く、均一に、何度も重ねる」ことです。一度に厚く塗ろうとすると、液だれの原因になります。壁面から15~30cmほど離し、常に一定の速度でスプレーを動かしながら、塗り重ねていきます。風の強い日や、湿度の高い日は避け、天候の良い日を選んで作業を行う必要があります。
外壁塗装のDIYでスプレーを使うメリット
これほどまでに手間がかかり、難易度の高いスプレー塗装ですが、プロの現場で採用されるのには理由があります。ここでは、主にプロが専門機材を使って行う場合のメリットをご紹介します。
メリット①表現のバリエーションを増やせる
スプレー塗装は、塗料を霧状にして吹き付けるため、非常に滑らかで、光沢のある美しい仕上がりを実現できます。また、凹凸のあるリシン壁やスタッコ壁など、ローラーでは塗料が入り込みにくい複雑な形状の外壁でも、隅々まで均一に塗装することが可能です。
メリット②重厚感を出せる
タイル調のサイディングなどで、目地と表面の色を分けたい場合、スプレー塗装は非常に有効です。また、石材調の塗料など、多彩な模様を持つ塗料の質感を最大限に引き出すことができるのもスプレー塗装ならではのメリットです。これにより、単色塗りにはない、高級感と重厚感を演出できます。
メリット③作業効率が上がる
広範囲を均一に、かつスピーディに塗装できるため、ローラーや刷毛で塗るよりも作業効率が格段に上がります。これにより、工期を短縮することができ、結果的に人件費などのコスト削減にも繋がります。ただし、これはあくまでプロが適切な機材と段取りで行った場合の話であり、DIYでは養生などに時間がかかり、逆に非効率になることがほとんどです。
外壁塗装のDIYでスプレーを使うデメリット
プロにとってはメリットの多いスプレー塗装ですが、DIYにおいては、そのメリットを遥かに上回るデメリットとリスクが存在します。
デメリット①周囲に飛散する
スプレー塗装における最大のデメリットであり、最も注意すべき点です。塗料が霧状になって広範囲に飛び散るため、どんなに注意深く養生しても、風に乗って想定外の場所まで飛んでいってしまう可能性があります。
お隣の家の壁や窓、干してある洗濯物、そして大切な愛車などに塗料が付着してしまった場合、深刻なご近所トラブルに発展し、高額な損害賠償を請求されるケースも少なくありません。プロは、徹底した養生に加え、天候や風向きを精密に計算し、飛散防止ネットを張った足場の中で作業を行うことで、このリスクを最小限に抑えています。
デメリット②労力がかかる
一見、楽そうに見えるスプレー塗装ですが、DIYで行う場合は多大な労力が必要です。まず、前述の完璧な養生には、丸一日かかってもおかしくありません。また、缶スプレーは連続噴射できる時間が短く、すぐに中身がなくなります。何度も缶を振ったり、交換したりする手間がかかり、ずっとボタンを押し続ける指の疲労も相当なものです。
デメリット③コストがかかる
「DIY=安い」というイメージがあるかもしれませんが、スプレー塗装の場合はそうとは限りません。外壁用の缶スプレーは1本あたり1,000円~2,000円程度しますが、1本で塗れる面積はごくわずかです。家一軒を塗るとなると、一体何十本、何百本の缶スプレーが必要になるか分かりません。
養生材や下塗り材、保護具などを揃える費用もかかります。結局、ローラーと刷毛で塗装するよりも、あるいは専門業者に依頼するのと変わらないくらいの費用がかかってしまった、ということも十分にあり得るのです。
デメリット④仕上がりにムラが出る
均一な塗膜を作るためには、壁面との距離とスプレーを動かす速度を常に一定に保つ必要があります。これは熟練の職人でも難しい技術であり、素人が行うと、必ずと言っていいほど色ムラや液だれが発生します。一部分だけ色が濃くなったり、塗料が垂れた跡が残ったりと、プロの目から見れば一目で「素人仕事」と分かるような、残念な仕上がりになってしまうでしょう。
外壁塗装のDIYでスプレーを使う場合の注意点
もし、デメリットを理解した上で、どうしてもDIYでスプレー塗装を行うのであれば、以下の点に細心の注意を払う必要があります。これらは、塗装の品質と耐久性、そしてあなた自身の健康に関わる重要なポイントです。
基準の塗布量を守る
塗料には、その性能(防水性、耐久性など)を十分に発揮するために必要な、メーカーが定めた「基準塗布量(1平方メートルあたりに塗るべき塗料の量)」があります。スプレー塗装は、この塗布量の管理が非常に難しいのが特徴です。
薄く塗りすぎると、塗膜が十分に形成されず、紫外線や雨水から外壁を守ることができません。結果として、数年、早ければ1年以内に剥がれや色褪せが発生し、耐用年数を大幅に下回ってしまいます。安く済ませたつもりが、すぐに再塗装が必要になる「安物買いの銭失い」の典型的なパターンです。
足場と壁面に距離を空ける
高所作業を行う場合、万が一足場を組んだとしても注意が必要です。スプレーガンを均一に動かすためには、壁面との間に一定のスペース(ワーキングスペース)が必要になります。足場が壁に近すぎると、スプレーを振るスペースがなくなり、適切な距離を保てずに塗装ムラの原因となります。プロは、このワーキングスペースを計算して足場を設置します。
凹凸に汚れが溜まる
スプレー塗装の表面は、ローラー塗りに比べて、わずかにザラザラとした梨地状の仕上がりになることがあります。この微細な凹凸は、汚れやカビが付着しやすく、一度汚れると洗い流しにくいというデメリットがあります。特に、交通量の多い道路沿いや、湿気の多い場所では、数年で汚れが目立ってくる可能性があります。
外壁塗装のスプレーはDIYせずプロに任せるのがおすすめ
今回は、DIYでの外壁スプレー塗装について、その有効性とリスクを詳しく解説しました。
外壁塗装は、あなたの大切なマイホームの資産価値を維持し、快適な暮らしを未来にわたって守るための重要なメンテナンスです。目先の費用を抑えることだけを考えて安易なDIYに走り、取り返しのつかない失敗をしてしまっては、元も子もありません。
アイシーホームペイントは、塗装のプロフェッショナルとして、一件一件のお住まいの状態を正確に診断し、最適な塗料と工法をご提案します。スプレー塗装を行う際も、徹底した安全管理と養生、そして長年の経験で培った確かな技術で、美しく、そして耐久性の高い完璧な仕上がりをお届けします。
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